Tuesday, December 7, 2021

『最後の場所で (チャンネ・リー)の感想(10レビュー) - ブクログ

『最後の場所で (新潮クレスト・ブックス)』(チャンネ・リー)の感想(10レビュー) - ブクログ









最後の場所で (新潮クレスト・ブックス)
著者 : チャンネ・リー 高橋茅香子

新潮社

3.83
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感想 : 10件

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Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
/ ISBN・EAN: 9784105900281

作品紹介・あらすじ

礼節ある「日系アメリカ人」の封印された過去-。PEN/ヘミングウェイ賞受賞で鮮烈なデビューを飾った気鋭のコリアン・アメリカン作家による最新長篇。




感想・レビュー・書評
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midnightwakeupperさんの感想
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2020年2月4日



元日本兵が米国で商業と土地ころがしで財を成して「日系人」として尊敬される、なんてありうるかなあ。しかも実は朝鮮人で医療将校という高級軍人。はるかフィリピンまで軍により強制連行された朝鮮姉妹の妹が処女で強制性交が嫌で自殺する…「もうじき戦争は終わる(朝鮮は日本なのになぜ「負ける」と言わないか)、私達が生きていられるとは思えないわ」虐殺示唆/慰安婦とは忖度した言い方で売春婦、ということさえ憚られる韓国。韓国系作家はなおさら愛国心を発露しなければいけないらしい。元慰安婦と3時間話して聞いた材料というファンタジー。娘(養女)がアバヅレになったのも、因果応報と言いたいらしい。
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くたおさんの感想
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2019年5月27日



淡々としていながら、なにかに対する恐れを隠しているような主人公の一人語りは、ニューヨークで一人暮らす老年のドク・ハタの孤独を、ときおり水面に上がってくるように思い出される過去のさまざまな記憶とともに紡ぎ出す。

必ずしもいろんなことが上手くはいかなかった老人の人生を静かに語るようでもあり、なかなか全貌を見せないミステリーのようでもある。

日本人に育てられた韓国人という設定がよくわからなかったが、途中で語られる戦時中の出来事に、「ああ、これが描きたくてそういう設定にしたのね」と。

個人的にはいろいろと複雑な想いを持たざるを得ない内容だったけれど、読ませる力のある作家。
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rose2429さんの感想
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2017年5月23日




人生の穏やかな時期に差し掛かっている、街の人からは愛と敬意を込めてドク・ハタと呼ばれている男性の静かな語り口で物語は始まりますが、一見平和な日々の積み重ねにみえる現実の描写は、差し挟まれる彼の記憶の炎に徐々に包まれていきます。

負った傷は時を経て滑らかになるものもあります。
ですが、人の成熟によっては薄く残るだけに見えた傷が、時として大きく開き、新たな血が噴き出すこともあります。


望んで迎えた養女、愛した人。
暗い過去の影は常につきまとい、強く愛しながらも大切な人たちが去って行く姿を成す術もなく見送ります。

それでも暗い影を照らしていくのは、現在に生を持つ人々がもたらす光でした。

「生涯でまたもやだれかを見捨てることなど耐えられなかったのだ。」

「もし彼の胸のなかに手を入れなくてはならないのなら、私はそうする。なかに手を入れて乱暴に彼の心臓を掴み、必ず生き返らせる。」

長い年月がもたらす罪悪感を拭いきれないまま孤独の淵に立たされますが、目の前で起こる突然の事故をきっかけにそれまで保ち続けてきた体裁をかなぐり捨て、彼が持つ本来の生命力と本能に激情のまま従い、勇気を持って、もう一度他の生命を慈しむことを選択します。

激しい物語ながらも、一人の人間を捉えた文章は最後まで静かで美しい。
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マッピーさんの感想
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2015年6月11日




ニューヨークから北へ50分ほど離れたところにある小さな町、ベドリー・ランに住むドク・ハタ。
永年経営していたドラッグ・ストアをたたみ、今は高級住宅街の大きな家にひとりで暮らしている。
毎日の散歩、スイミング、そしてたまの読書の生活。

地元の名士として町の人たちから親しまれ、常に穏やかなたたずまいの彼には、一見何の問題もないように見える。
しかし彼には、大事に育ててきたのにどうしても懐いてもらえず、17歳で家を飛び出してしまった音信不通の養女がいるのだ。

“状況は理想的とはいえないが、思うに私にとってもはや人生のその時々というのは、正しかったり正しくなかったりする必要はなく、「価値」に満ちていたり重みがある必要もなく、ただあるがまま、そのとおりでいいのであって、今の場合は私とレニー(古い友人)がまた気軽な時間を共有して冗談を言い合ったりすることで十分なのだ。”

そういうものか、と思った。
歳を取っていくというのは、単純にそういうものだという話なのだと。

けれど、何の問題もなさそうな彼が、どうして養女サニーとうまくいかなかったのか。

初めは娘の方に問題があるように読めた。
彼女が自分勝手なんじゃないの?

サニーが彼に向けて言った言葉。
「彼女(婦人警官)があなたの機嫌をそこねられないのは、あなたが、必要もないときに、ほんとはしたくもないことを、とにかくしてくれた親切な良い人だからよ。あなたは親切心で人に負担をおわせる。」

元恋人のメアリー・バーンズはこう言った。
「あなたは、いつもあまりに一生懸命やってみようとするのよ、フランクリン、まるで私を愛するのが誓いをたてた義務ででもあるかのように」

原題は「ジェスチャー・ライフ」
ジェスチャー=体裁

完璧な体裁。
しかしその中身は虚ろである。
それはなぜか。

ドクは在日コリアンの家庭に生まれたが、幼少時に日本人黒畑夫妻の養子になった。
養父母に対し出来るだけの孝行をし、礼節を尽くしたと考えるドク。
しかしそこに情は通っていたのか?
育ててもらった恩はもちろん感じているだろうが、それは血のつながった親に対するものと同じだろうか。
日本人ではないのに日本人として育てられた違和感は、ドクの心の奥底にずっとたまっていたのではないか。

結婚をしたことのないドクが育てたサニーは、明記されていないがコリアンである。
周囲の人たちが養女だとわかっていても、いつか本当の親子みたいと思ってくれるように、コリアンの子を希望したのだ。
しかし、ドクの元に来た娘は、肌の色が黒すぎた。
多分戦争が生んだ、私生児なのだ。
だから、一瞬彼はがっかりした。
サニーはその一瞬を見逃さなかった。

条件ではなく、サニーそのものを見ればよかったのに。
ここでも彼は、体裁の方を選んでしまった。無意識に。
彼は彼なりにサニーを大切に、慈しんで育てていたと思う。
でも、心の交流はあったのだろうか。

まだ若かった頃、第二次世界大戦に日本兵として従軍した彼は、そこで、韓国人従軍慰安婦たちと出会う。
志願兵と紹介された彼女たちはまだ幼く、何が起こるのかもわからないまま連れてこられ、心身ともに傷つけられていく。

医療の心得がある者として彼女たちの健康管理などを任された彼は、ひとりの慰安婦と親しくなり、そしてそれは決して幸せになることのできない道へとつながっていく。

韓国人としても日本人としてもアメリカ人としても、よそ者だった彼。
大切な人を守ることができなかった過去。

一生懸命人に親切にすることでしか自分の居場所を作れない。
離れて行った養女、恋人。
誰とも本当の関係を築くことができなかった彼は、高級住宅街にある大きな家だけが、自分の人生を肯定できる担保だった。

“私の願いはただひとつ、集団の一部になること(百万分の一であろうとも)であり、体裁だけではないなにかがある人生をたどることだった。それでいて、いまになってわかるのは、じつは私もさまざまな出来事の重要な一部分をなしていたということであり、それはKも、ほかの女も、兵隊も、そのほかの者も同じだった。じつに怖ろしいのは、いかに私たちがその中核をなしていたか、邪気があろうとなかろうと、いかに私たちがもっと大きな歴史の流れに関わっていたか、自分自身と互いとを戦争というまったく徒労の動力に捧げていたかということだ。”

カズオ・イシグロの『日の名残り』を思わせる出だしだったが、セピア色に暮れていく人生の時を静かに感じるその物語より、もっとビターな読後感が残った。
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麻沙古さんの感想
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2013年10月9日



目の前にある淡々と静かに流れているような、古く乾いた川が、
実は深いうねりをもって河口へ流れ
て行くようなお話。

人の表面的な部分、
血の流れる深み、
緻密に書かれていて、長編小説の楽しみを味わえた。

手に取ったきっかけは、移民文学が読みたかったから。

2013/10/9読了
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3014さんの感想
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2013年4月28日



4/26読了
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Meninaさんの感想
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2010年10月24日



NY郊外に誰もがうらやむような邸宅を構え、町の人々に尊敬を受けて引退生活を送っている日系人のハタ。その生活は平穏で、波風立たず、ちょうど彼が毎日泳ぐ自宅の庭のプールの水面のようだ。だがプールは、潜ってみると灰色に塗られいるので思いのほか薄暗い。彼の人生を通り過ぎて行った女性たちとの思い出が明らかになっていき、「ここではないどこか」に自分は属するべきではないかといううっすらとした疎外感が薄紙をはぐようにしてわかっていく。文体もすばらしい。
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sweetcakeさんの感想
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2010年7月31日



礼節ある「日系アメリカ人」の封印された過去―。PEN/ヘミングウェイ賞受賞で鮮烈なデビューを飾った気鋭のコリアン・アメリカン作家による最新長篇。
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Nenovedさんの感想
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2009年7月17日



静かに忘れ去られて悲しい。

その鮮烈な過去はどこにも還元されずどこを漂うのか。
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真白さんの感想
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2005年6月2日



長年医療用品や器具を扱う店を営んでいたハタという日系アメリカ人が主人公。
ハタの過去と現在が細やかな光のように交錯する。

過去を誰も消すことは出来ない。
心の窓を少ししか開かず親切なひとは万人に愛される。
しかしその孤独と悲しみは静かにヒタヒタと寄せる波のように常に心の襞をなぞり続ける。

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